大学生活での4年間、ずっと同じ街に住んでいた。
僕はラーメンが好きなだが、その街にも駅の近くにラーメン屋が3店舗あった。
1つは某家系ラーメンの系列。
1つはその地に構える老舗の味噌ラーメン屋。
どちらも人気で、御飯時はいつも人が並んでいた。
そんな人気ラーメン店の傍、いつもガラガラのラーメン屋があった。
醤油ラーメンのお店なのだが、全然人気がない。
ラーメンのチャーシュートッピングの代わりに、ベーコンが使われていた。
何とも、安っぽいラーメン屋、そしてラーメンであった。
店主のおじいさんはいつも、駅近のマルエツに置いてる1000円のポロシャツを着ていた。
そんな人気のないラーメン屋が僕は大好きだった。
誰も知らない、まる自分だけの秘密基地のような、そんな気持ちでいつもラーメンを食べていた。
飲み終わりでの一杯は必ずそこのラーメン屋に通っていた。
といっても、そんなに頻繁に通っていたわけではない。
月に2-3回行くぐらいだ。
お客も少ないので、店主とはすぐに顔見知りになった。
店内にたくさん貼られている美術館のポスターが、その人の嗜好をあわらしていた。
ラーメン屋は半分趣味でやっているらしく、今は別の街で一人で暮らしているらしい。
老後の、暇つぶしというか、なくなってしまった人との繋がりというか生き甲斐を求めてとか、そんなようなことらしい。
奥さんは施設だったか、もう他界されてしまったのか、あるいはそもそも未婚なのか、正直忘れてしまった。
そして、4年生の2月の卒業間近で僕はその街から離れることが決まった。
最後に顔だけ出そうと決めたのだが、結局その月は一度もお店に行くことができなかった。
「まあ、またそのうち行くか」
そう思って新しい街をに越した。
そこから半年後くらいだろうか。
たまたま以前の街に行く機会があったので、久しぶりにそのラーメン屋に顔を出すことにした。
元気でやってるかな?まだラーメンのトッピングはベーコンなのかな?お客さんは入ってるかな?
そんなことを思い巡らせながらお店に向かった。
が、その店は既になかった。
別のお店が入ってるわけでもなく、ただ寂しげにシャッターが下りていた。
僕はその店を後にし、駅前に人気ラーメン屋で腹を満たして帰路についた。
ぴっぴ
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